
新規SaaSプロダクトの成否は、データの鮮度が握っています。開発フェーズから参画し、組織データをリアルタイムで可視化するBI(ビジネスインテリジェンス)環境を構築。KGI/KPIの進捗を一目で把握できるダッシュボードを整備することで、感覚的な判断を排除し、データドリブンな意思決定を可能にしました。プロダクトの成長速度を加速させる基盤を整えたプロジェクトの詳細をご紹介します。
SaaSプロダクト開発の現場では、こんな状況が日常的に発生しています。
「ユーザー数は増えているが、本当に成長しているのか確信が持てない」 「機能追加の優先順位を、各メンバーの感覚で議論している」 「経営会議で見る数字と、現場が追っている数字が一致していない」 「データはあるが、必要な時に必要な形で取り出せない」
これらは、プロダクトのデータ基盤が「ある」のと「使える」の間に深い溝があることを示しています。データを蓄積するだけでは経営判断には繋がりません。正しい指標を、正しいタイミングで、正しい人に届ける仕組みがあって初めて、データは経営の羅針盤として機能します。
本プロジェクトでは、新規SaaSプロダクトの開発フェーズから参画し、この溝を埋めるためのBI環境構築とKPI管理自動化を一気通貫でご支援しました。
1. KGI/KPI体系の設計
プロダクトの最終的な成功指標(KGI)から逆算し、それを支える中間指標(KPI)を体系的に設計しました。「売上」「ユーザー数」といった大きな数字だけでなく、それらを動かすための先行指標(アクティブ率、機能利用率、継続率、NPSなど)まで含めて、指標のツリー構造を構築しました。
設計にあたっては、プロダクトのビジネスモデル、ユーザー行動、開発ロードマップを総合的に分析。経営層・事業責任者・プロダクトマネージャー・エンジニアそれぞれが自分の役割に応じて見るべき指標を明確に定義しました。
2. データパイプラインの構築
KPIを正しく計測するためには、プロダクトから出力されるイベントデータを適切に収集・加工・蓄積する基盤が必要です。データソースの統合、データクレンジング、集計ロジックの実装まで、開発チームと密に連携しながら構築しました。
特に重視したのは、データの鮮度です。「昨日までのデータを翌日に見る」ではなく、「今この瞬間に何が起きているか」を把握できるリアルタイム性を実現する設計にしました。
3. BIダッシュボードの整備
経営層・事業責任者・現場のそれぞれが必要とする情報を整理し、役割別のダッシュボードを構築しました。
経営層向け:事業全体の健康状態を一目で把握できるサマリー型
事業責任者向け:施策ごとの効果測定と次のアクション判断ができる分析型
現場向け:日次の業務オペレーションに直結する実務型
「すべての人が同じダッシュボードを見る」のではなく、役割ごとに最適化された情報設計を徹底しました。
4. KPI管理の自動化
ダッシュボードを作って終わりではなく、KPI管理プロセスそのものを自動化しました。週次レポートの自動生成、異常値検知時のアラート通知、月次・四半期サマリーの自動配信など、人手をかけずに組織が常に最新の数字に基づいて動ける状態を構築しました。
「数字を集計する作業」に時間を使うのではなく、「数字を見て判断する」ことに時間を使える組織へ——これが本プロジェクトで目指したゴールです。
プロダクトのKGI/KPI体系が明文化され、組織全体で同じ指標を追える状態を実現
データのリアルタイム可視化により、意思決定のスピードが大幅に向上
役割別ダッシュボードにより、各レイヤーが自分に必要な情報にすぐアクセスできる体制を構築
KPI管理の自動化により、集計・報告作業の工数を大幅削減
データドリブンな意思決定文化が定着し、感覚論ではなく数字で議論する組織へと転換
「BIは『見る道具』ではなく『動かす道具』。組織がデータを基に動き続ける状態を作って、初めて投資が回収される。」
BI構築プロジェクトでは、「美しいダッシュボード」を作ることがゴールにすり替わりがちです。しかし本当に重要なのは、そのダッシュボードが組織の意思決定にどう組み込まれているかです。
どんなに高機能なBIツールを導入しても、誰も見ない、見ても判断に繋がらない——そんな状態では投資の意味がありません。Desiaが本プロジェクトで重視したのは、ダッシュボードを業務フローに組み込み、データを見て判断するサイクルを組織習慣化することでした。
週次のKPIレビュー会議の設計、異常値検知時の対応プロトコル、データに基づく意思決定の議論ファシリテーション——これらを丁寧に組み立てることで、BIが「導入されただけ」で終わらず、「使われ続ける」状態を実現しました。
データは集めるだけでは意味がありません。組織がそれを羅針盤として使い続ける——その状態を作ることが、本プロジェクトの真のゴールでした。
多くのSaaS企業では、プロダクトをリリースした後にデータ基盤の整備を始めます。しかしこのアプローチには、構造的な課題があります。
リリース後にデータ基盤を構築する場合、既に蓄積されているログデータの整形、後付けでのイベント追跡実装、過去データの遡及的分析など、多大な技術的負債と工数が発生します。さらに、ビジネス側がデータを使う習慣がない状態でツールだけ導入しても、組織として活用される確率は低くなります。
本プロジェクトで実証したのは、開発フェーズからデータ基盤を組み込むことの圧倒的な優位性でした。プロダクト設計と並行してデータ設計を行うことで、必要なイベントが最初から取得され、無駄のないデータパイプラインが構築されます。そしてビジネス側も、リリース時点から「データで判断する」習慣が形成されます。
データ基盤は、後から作るほど高コストで、効果は逓減します。0→1のタイミングでデータを仕込む——これがSaaS事業の成長速度を決定的に左右する要因の一つです。
「SaaSプロダクトを開発中だが、データ基盤の設計まで手が回らない」 「BIツールを導入したが、組織で活用されていない」 「KPIは設定しているが、リアルタイムで把握できていない」 「経営層と現場が見ている数字が違っており、議論が噛み合わない」 「KPI管理に多くの工数が取られ、本質的な分析に時間を使えない」
こうしたご相談をお持ちでしたら、お気軽にお問い合わせください。プロダクトの開発フェーズから、貴社の事業モデルに最適なBI環境とKPI管理基盤の設計をご支援します。
OTHER
その他記事一覧
自律観測型AI開発 プロジェクト Athena_v1.0 開発記 #1
一行もコードを書かないまま1,100行の要件定義を書き切った、自律観測型AI「Project Athena」の開発記。
AIコミュニティRIALAの運営を「実装で」支える ── 自動採点システムと実践ライブのFDE型支援
DesiaはAIコミュニティ「RIALA」の立ち上げ・運営支援に取り組んでいます。運営体制の支援にとどまらず、コンテストの自動採点システム(GAS+Claude API)の開発やClaude Code実践ライブ会の登壇など、自ら実装・実演するスタイルでコミュニティの価値を作っています。運営支援を「提言」で終わらせないFDE型の実践事例です。
福祉の現場に入り込むプロダクト開発 ── 収支管理アプリ「FUKU-CHI」にFDE型で伴走
Desiaは2024年12月より、福祉施設向け収支管理Webアプリ「FUKU-CHI」のプロダクト開発責任者として、課題定義からUI/UXデザイン、プロトタイプ検証、テストマーケティングまでを一気通貫で担っています。福祉業界という制度知識が不可欠な現場に入り込む、DesiaのFDE型事業開発の代表事例をご紹介します。
自社開発SNS分析ツール「SNS Insight Pro」が完成、クライアントへの無償提供を開始
事業開発事務所Desiaは、Instagram公式APIを活用したSNS分析ダッシュボード「SNS Insight Pro」の開発を完了しました。AIエージェント「Manus」を活用したSNS自動投稿の仕組みとあわせて、FDE(Forward Deployed Engineer)としての実践の一環として、Desiaのクライアントには無償でご提供します。
打刻アプリを内製した理由:現場の勤怠課題をNext.js×Supabaseで解決する
多くの中小事業者やクライアント現場で、勤怠管理は「エクセルへの手入力」「紙のタイムカード」「高機能すぎて使いこなせない既製SaaS」のいずれかに落ち着いています。Desiaでは、こうした現場の実態に合わせた打刻アプリをNext.js+Supabaseで内製し、必要十分な機能に絞ることで運用定着を実現しました。本記事では、なぜ市販ツールではなく内製を選んだのか、どのような課題をどう解決したのかを、技術構成とあわせて紹介します。
AIの波を乗りこなすコミュニティ戦略。要件定義からプロンプト開発まで、ゼロベースでの事業立ち上げ
AIを「学ぶ」で終わらせず、「実務の成果」に変える場所をどう作るか——AIコミュニティ「RIALA」の立ち上げを伴走支援しました。サービスコンセプトの言語化からLP制作、運用基盤の設計まで、立ち上げの全工程を共に走り抜いたプロジェクトの全貌をご紹介します。
営業組織の解体と再構築。IS/FS分業体制の確立とZoho CRMによる完全自動化プロセス設計
「属人的に売る」から「組織で勝つ」へ——営業組織の解体と再構築を伴走支援したプロジェクトをご紹介します。IS/FS分業体制の構築、人材スペック策定、評価制度設計、Zoho CRMによる完全自動化まで。拡大フェーズに耐えうる強靭な営業マシンを共に作り上げました。
クリエイティブの質を落とさず、時間を創る。AI時代の次世代ディレクション・モデルの実装
「忙殺されるディレクター」を解放し、本来注力すべきクリエイティブな思考時間を確保するために。Web制作の現場へ最新のAIツールを導入し、業務フローを根本から見直すワークショップを展開しました。AI時代の次世代ディレクション・モデルを実証したプロジェクトです。
「現場で通用する」を体系化する。次世代クリエイターを育むオンラインデザインスクールの全貌
ツールの操作方法を教えるだけのスクールではありません。Illustrator、Photoshop、Figmaといった必須スキルに加え、「仕事としてデザインすること」の本質を伝える実践的カリキュラムを開発。未経験者をプロのデザイナーへと変える育成プラットフォームを築き上げました。
55名の組織を率いて市場を切り拓く。総務省での知見に基づく「CX向上」と組織マネジメント論
年商800億円規模の大手企業にて、最大55名の部下を束ねるプレイングマネージャーとして最前線に立ちました。総務省でのプレゼン経験に裏打ちされた「エンドユーザー体験(CX)」視点を組織に浸透させ、新規拠点の開拓と人材育成を同時並行で推進した、組織マネジメントの実践事例です。
ファンを熱狂の渦へ。数秒の遅延も許されない芸能イベントLPにおけるUI/UXと負荷対策
アクセスが爆発的に集中するエンタメイベントにおいて、システムダウンは許されません。サーバーサイドとの連携による負荷分散を前提に、ファンの高揚感を損なわないリッチなビジュアル表現と、迷いなく購買へ導くUI設計を両立。システム要件という制約の中で、クリエイティブの力を最大限に発揮し、興行の成功をデザインの側面から強力にバックアップしました。
データを経営の羅針盤に。SaaSプロダクト開発におけるBI構築とKPI管理の自動化
新規SaaSプロダクトの成否は、データの鮮度が握っています。開発フェーズから参画し、組織データをリアルタイムで可視化するBI環境を構築。KGI/KPIの進捗を一目で把握できるダッシュボードで感覚的な判断を排除し、データドリブンな意思決定を可能にしました。
企業の「核」を視覚化する。要件定義から実装まで、一気通貫で紡ぐブランド・ストーリー
クライアントの中に眠る抽象的なビジョンや想いを言語化し、具体的なデザインへと昇華させるプロセスです。コーポレートサイト、ホワイトペーパー、バナーなど、あらゆるタッチポイントにおいて一貫したブランドメッセージを発信。上流の要件定義から細部のピクセル調整までを一気通貫で担い、企業の信頼性とブランド価値を最大化するクリエイティブを提供しました。
ツール導入で終わらせない「定着するDX」。社内システムリプレイスと現場の意識改革
高価なツールを導入しても、現場が使わなければ意味がありません。システム開発の要件定義から携わりつつ、真の課題である「現場スタッフの意識改革」に注力。丁寧なオンボーディングと業務フローの再設計を通じて、新しいシステムが日常業務に溶け込むまで伴走しました。「やらされるDX」から「自ら活用するDX」へ、組織文化のアップデートを実現した事例です。
熟練の勘をデータという資産へ。製造業の営業ブラックボックスを解き放つ、CRMとBIによる組織変革
「誰が、いつ、どこで売っているのか見えない」——そんな製造業特有の属人化した営業体制にメスを入れました。kintoneによる顧客情報の資産化と、Looker Studioによる「勝てる行動」の可視化を断行。現場の抵抗を乗り越え、データを武器に戦う営業組織へとマインドセットごと変革。結果として、再現性のある成約プロセスと、経営判断に直結するクリアな数値管理体制を確立しました。
国境を越える「直感」を設計する。MaaS事業におけるグローバル・デザインシステムの構築とUX最適化
言語や文化の壁を超え、世界中のユーザーが迷わずに操作できる「共通言語」としてのデザインシステムを構築しました。国内外の多様なステークホルダーが関わるMaaSプラットフォーム開発において、Figmaを中核に据えたデザイン基盤を整備。開発スピードの劇的な向上だけでなく、ユーザーが移動体験そのものに没入できるシームレスなUI/UXを実現し、スマートモビリティの未来をデザインで具現化しました。
美しさだけでは売れない。マーケティング戦略と一体化したECサイトリニューアル・V字回復の記録
単なる「見た目の刷新」はリニューアルではありません。徹底的なアクセス解析と顧客インサイトの分析に基づき、購買意欲を喚起するUX導線をShopify上でゼロから再設計しました。予算管理からSNS広告運用、さらには新商品開発の商談まで、ビジネスの全領域を総指揮。デザインを経営資源として活用し、低迷していたサイトを「売れ続ける収益エンジン」へと生まれ変わらせました。
View more →